なぜ、今、実践心理学なのか

　今ほど心理学がホットになった時代はないのではないだろうか。
かつては、どちらかと言えば、特殊な人だけが学ぶ、地味な分野。
大学などでも、一応は講義科目として設けられており、人気の高
い講義ではあった。しかし、人気があるのは、決して心理学を学
びたいという熱心な学生が聴講するからではない。彼らにとって、
心理学とは、単位をそろえるための「通行手形」という位置づけ
でしかないのである。心理学系の講義は単位が取りやすい（実際
はそんなことはないのかもしれないが）というまことしやかな噂
が学生の間でも広がっていたということも人気の理由のひとつだ
ったのだろう。担当教授としては、さぞかし残念に思っていたの
ではないだろうか。

　かく言う私も、大学時代に専門科目で「教育心理学」なるもの
を２コマ取っていた。もちろん、心理学に特別な興味を抱いてい
たわけではなく、最低１コマ２単位が必修だったからという理由
である。あれから２０年。学習した内容で、かすかに記憶にある
のは、「フロイト」や「ユング」といった著名な人物の名前のみ
である。しかし、今のご時世、彼らの名前を知っていることに何
の意味があるだろうか。単純な知識は、スマホで検索すればたち
どころに知ることができる。「彼らの学説や功績が現代にもたら
す意義は何か？」と深い議論になると、たちどころに口籠ってし
まう。

　最近は、対立的な考え方として、アドラー心理学なるものが世
を賑わせているようだ。ベストセラーとなった『嫌われる勇気』
と『幸せになる勇気』を読んだ人もいるのではないか。関連する
本は、枚挙にいとまがない。ドラマ化もされ、一躍「時の人」と
なったアドラー。

　これほどまでに広がったのは、アドラー心理学が、これまでの
心理学的なアプローチと全く異なっていることはもちろんのこと、
現代の日本において、人が抱える闇に対してダイレクトに光を当
てる手法だったからではないか。人は、学問的な心理学を求めて
いるのではない。日常の何気ないコミュニケーションや人間関係
のトラブルを解決するためのヒントを求めていることの証左であ
るように感じられる。正に、実践的に使えるものであることが大
切なのだ。

　「手っ取り早く、即効性のあるものを求める」というと、いかに
も現代日本を象徴しているようであまり気分のよいものではない。
このような考え方に著しく偏った結果、人は考える力を失ってし
まったと言われればそのとおりだろう。
しかし、悩んでも苦しんでも、目の前の課題に対して何の解決策
も見出せないのであれば、思い切って、「答え」を人に聞いても
よいのではないか。分からないことを素直に教えてもらうことは
何ら恥ずかしいことではない。むしろ、できないことを放ってお
く自分自身を恥じるべきではないか。別に特別なことが必要なわ
けではない。必要なのは、一歩踏み出す勇気。この実践心理学講
座という場に来てくれるだけでよいのだ。

　あなたが求めている答えは、意外に身近なところにあるのかも
しれない。そして、保証する。そこは、安心・安全な場所である
ことを。

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